彼の手がキライ



――…


「お母さん大丈夫?」


自宅に戻り、布団に横になっている母親に声をかける。


掛け布団を握り、わたしの方を見る。


「大丈夫、ありがとう。ごめんね、心配させて」


眉を下げ、申し訳なさそうに言う。


仕事中、突然目の前が暗くなってバタンと倒れたらしい。


病院で検査したけど特に異常もなく、先生からは『ずっと立ちっぱなしで下半身の血液が脳に戻らなくて倒れたんでしょう』と言われた。


「大丈夫、しばらくお父さんの家に行くのも控えるから。わたしが扶養越えない程度にバイト頑張るよ」


お父さんの家に行くにも交通費がかかる。