彼の手がキライ



体育館全体を見渡すと前から後ろまで何列もパイプ椅子が並んでいる。


パイプ椅子の列の一番前を見るとタツとタツと仲がいい人達がわいわいと騒いでいるのが見える。


彼の周りにはいつも男女問わず人がいる。


顔がかっこいいから人気者なんだって前は思ってたけど、今はそうは思わない。


タツは基本、誰にでも優しい。


電車で出会うまではタツという人物に興味がなかった。


ちゃんと彼を見たことがなかった。


最近タツをよく見るようになって、さりげない気遣いが出来て明るいから人気者だし、モテるんだろうなって。


わたしに構うなんて物好きだなーって思うけど。


こうして見るとなんだか遠い存在だなって思ってしまう。


今もこうして見ていても目が合わな――。


「あれ、今新井くんこっち見て笑ったよね?」