彼の手がキライ




なんだか少し気まずくて、とっさに口元を手で覆った。


「優羽にとられて、希利にとられて、俺って魅力ねぇのかな~って思っちゃうわけだ」


世間一般にはイケメンの部類に入る彼の口から出ていると思えない言葉たち。


というか、タツの言葉だと思えない。


いつも口喧嘩には負けない強気な発言はどこに行ったの?


「タツらしくない」


口元に手があるまま話してるから声がこもって自分に返ってくる。


こもって聞き取りにくいであろうわたしの声を聞き取ってくれたんだろうね。


さっきまで悲しそうな顔だったタツが、いきなりニコッといつもの笑顔を作った。


そして、わたしの頭をポンポンと叩いた。


「俺もナルシストじゃないから弱音くらい吐くってば。いつも可愛くない発言ばかりする美羽が今日は随分可愛らしいことばかりで違和感しかないんだけど!」