彼の手がキライ




“莱ってあんまチョコの菓子食べないらしいんだけど、優羽からもらったチロルはいつも嬉しそうに食べてたな”


ふとタツが前言っていたことを思い出した。


あれ、なんでわたしこんなこと思い出してるんだろ。


「大切なものを置いて矢沢はいなくなっちゃうし、その大切なものはまた別のやつにとられちゃうし、本当にみんなしてずりぃよな~」


やっぱり乾いた笑い。


悲しそうなタツの顔が脳裏に焼き付いて、ずっとずっとタツの顔が見えないのに胸がぎゅーっとして切ない。


話を聞いて一人の女の子が頭に浮かんだ。


――莱ちゃんだ。


さっきふと出てきたタツの言葉をなんで思い出したんだろって不思議に思ったけど、タツが莱ちゃんのこと言ってると直感したから思い出したんだ。


タツ、莱ちゃんが好きだったんだ……。