彼の手がキライ




それに、そろそろ本当に行かなきゃバイトやばい。


「じゃあね、タツ。またね」


そう言ってコンビニの方に体を向けて行こうとした時、やっと伏せ目がちにだけどまぶたを上げた。


「なんでみんな矢沢ばっかりなんだろうな」


矢沢という響きに動かそうとした足が止まる。


体をタツに向けるとそっと彼の腕が背中にまわった。


思考回路が止まった。


ぎゅっと抱き締めるわけではなく、腕で作った輪に入ってるような感じだけど頭はもう真っ白。


「新井達也……?」


わたしが動揺した時にとっさに出てくるのは、この言葉らしい。