彼の手がキライ




「なんで謝るの?」


思うより先に口が言葉を発していた。


「いや、これはセリフだから」


まぶたをおろしたまま話すタツ。


「そんなバッドエンドなストーリーではないと思うんだけど」


絶対にセリフじゃない。


あれはわたしに向けて言ったと思うの、なんとなくだけど、そう思う。


だって今のタツ、とても悲しそうな表情に見える。


わたし何かしたのかな?


「バイトあるのにごめんって意味」


まだまぶたを上げない。


「さっきまで強気だったのになんなのよ、今更。謝らなくていいって」


バイトのことでもない気はするけど訊いても言ってくれないんだもん、仕方ない。