彼の手がキライ



でも、すぐ優羽くんの顔が頭に出てきてハッと我に戻った感覚。


――何考えてるんだろ。


自分で分かるくらい目を見開いていた。


タツのことを好きって一瞬勘違いしてしまうくらい、さっきの一瞬は役になりきっていたんだね、わたしは。


そんな自分が少し怖い。


タツなんて絶対に好きにならない。


わたしはずっと優羽くんが好きだったんだから。


若干パニックになってる脳内。


目の前にいるタツは何かを諦めるような表情でまぶたを下ろして優しい瞳を隠した。


そして唇の両端を上げた。


「ごめんね、ありがとう」


――とっさにこの言葉はセリフじゃないと思った。