彼の手がキライ



いくら練習でもわたしは人に“好き”って伝えたことないから緊張するんだってば。


目を開いてタツを見ると“早く言え”と目で言ってるのか知らないけど真面目に真っ直ぐわたしを見てきた。


「好きっていうのは美羽の言葉じゃない。俺の相手役の言葉だ。美羽はその練習だから何も深いこと考えなくて大丈夫だから」


そう言ってる彼の妙に優しい瞳を見たら、


“ああ、わたしは言わされてるからいいんだよね”


とか思っちゃて、今少しドキドキするのは役になりきるために必要なんだと自分に言った。


そう、全てをタツのせいにして自分が告白するわけじゃないんだと思った時、自然と唇が開いた。





「好き」