彼の手がキライ



この部屋に入るたびに、切ない気持ちと安心が混じる。


ほとんど何もない空間。


あるのは――小さな仏壇だけ。


仏壇には、お供え物と花、そして幼さが残る男の子の写真。


それらの前に、ろうそくや線香がある。


ピンクと黒のチェック柄のバックを置き、正座する。


「優羽くん……」



――優羽くんは1年半前


交通事故に遭って亡くなった。


恋人を庇って、車にはねられた。


もちろん、恋人はわたしじゃない。


莱(らい)って名前の金髪とたくさんのピアスが印象的な女の子が、優羽くんの彼女だった。