彼の手がキライ



「どした?」


急に黙り込んだからか、タツが心配してわたしの顔を覗き込んでくる。


「ううん、なんでもない。こんなところで話してたら時間もったいないよ、早く帰ろう」


自分で言ってから気づいたけど空はだいぶ暗くなってきた。


夕方の雲はなぜか昼に見る雲より重たく見える。


「あっ、ちょっと最後にお願いがあるだけどいい?」


家の方向に歩き出したわたしの腕をつかんだ。


「何?」


腕から伝わってくる温かさに少し頭がボーっとしながら彼の瞳を見た。