「なんでかって?」 わたしは首をコクリと下げた。 「さっきも言った通り、優羽の方の矢沢と混ざっちゃうのが1つ」 頭の後ろで組んでいた手をほどき、人差し指を立てる。 「もう1つ理由がある。新井達也って呼ばれるのがイ、ヤ、ダ」 立てた人差し指が“イ、ヤ、ダ”に合わせて3拍子のリズムをとった。 嫌って言われても逆になんて呼べばいいの? 新井くん?達也? 「新井達也ってフルネームだったら他人みたいじゃん。だからね、フルネーム以外で呼んでくれよ」