彼の手がキライ



「矢沢って言うとどうしても優羽の方が出てくるからさ……」


頭の後ろで手を組んでわたしを見てくる。



「美羽って呼んでいい?」


――名前を呼ばれた瞬間ドキッとした。


それは目の前にいる彼が歯を少しだけ出した笑顔が素敵だからだろうか。


あたりは少し薄暗くなってきているけど新井達也の笑顔は目にハッキリと映る。


こんな時に素直になれないわたしの口からとっさに出てきたのは、


「なんで?」


とずいぶん可愛らしくない言葉。


自分でも可愛くないと思う。