彼の手がキライ



グッと押すと、“ピンポーン”と小さな音が鳴る。


おそらく、家の中では大きく響いているんだろうけど。



インターホンを鳴らしてから10秒も経たない内にガチャとドアが開き、顔がひょっこりと出てきた。


「あら、美羽ちゃん。いらっしゃい」


肩まで伸ばした、緩く巻かれた黒い髪。


丸くない低めな鼻。


大きくも細くもない目。


この人は一体いくつなんだろ、と思ってしまうほど可愛らしい女性。


ドアを開いたのは――優羽くんのお母さんだ。


「さぁ、入って」