彼の手がキライ



穏やかな声で話す新井達也。


電柱の灯りだけが光るこの暗い道で、懐かしそうに手のひらにのったチロルを見た後、寂しそうな表情をわたしに向けた。


「このチロル見て莱が矢沢を思い出してくれねぇかな、っていつも期待しながら買ってるんだけど……」


彼は、ため息を1つ漏らしてビニール袋を持つ手に力を込めた。


「記憶って簡単には戻らねぇんだな」


……。


こんなにたくさんのチロルを買ったのは莱ちゃんのためというより……優羽くんのため?