――… 「疲れた顔してんな、お前」 今、わたしは電車の中。 つり革をつかんでユラユラと揺られながら、窓の変わる景色を見ていると左肩の方から声が聞こえた。 反射的に、顔が声の主を探そうと左に向く。 でも、視界に入ってきたのは顔じゃなく、細い腕だった。 細いと言っても女の腕ではなさそう。 柔らかそうには見えない。 男の腕だ。 視線を腕から少しずつ上に上げていく。 ……あ! 声の主の顔が見えた時、自分の目が大きく開いたのが分かった。