前に稚尋と一緒にいた女の子には、胸もおしりもちゃんとあった。
こんな私の体じゃ、女として稚尋に見られる訳がない。
それに比べて冬歌は見た目も中身も大人だ。
ふくよかな胸に、見事な脚線美。
それに比べて私は……撃沈。
大人の冬歌と比べる方が失礼なことだとは思うけれど。
冬歌は稚尋の義姉。
澪は未だその事実が信じられずにいた。
「稚尋って、そんなに女遊びが激しいんですか?」
澪の質問に、冬歌は首を傾げながら答えた。
「そうね……前は保健室でしょっちゅう……て感じだったけど。今は全然よ」
そう言って、冬歌は慰めるように澪の頭を撫でる。
澪は非常階段で稚尋を見てしまった。
あの時の稚尋はとても怖かった。
冗談が効かない、男の瞳。
そしてそれを楽しむかのような笑顔。
知らない稚尋の顔が、怖くて仕方なかった。
「……こんな話、聞いた?」
うつむき、黙り込んでしまった澪を見て、冬歌はゆっくりと話始めた。
「あたしに稚尋は基本的に何でも話してくれる訳なんだけど…………この前ね? 稚尋、女遊びをやめるんだって言ってた」
冬歌の言葉に、澪の肩がピクリと動く。
「聞いてません。そんな話」
澪はキッパリと言った。
澪に稚尋が近づく時は、決まって何か企んでいる時だ。
自分が楽しかったら、充分。そんな雰囲気を纏いながら、稚尋は澪に近づく。
「そう。じゃあ……何で女遊びやめたのか、知りたくない?」
冬歌はそう言って、ニコリと笑った。
それは。
「知りたい!!!」
当たり前じゃないか。
あの稚尋に限って、簡単に女遊びをやめるなんて、病気にでもなっちゃったか、なんて思ってしまう。
瞳を輝かせながら冬歌の言葉を待つ澪を見て、冬歌は笑った。
そして、一言。
「“本当に、手に入れたい女の子が出来た”んだってさ」
そう言った。
「え……?」
澪の頬が一気に熱を持つ。
そんな言い方をされたら、誰だって自惚れてしまう。
稚尋はそれをちゃんと知っているのだろうか。



