「おはよ、えり」



「おー!! もう全快?」



 暎梨奈の調子はいつもと変わらない。



 むしろいつもより元気かもしれない。




 当然といえば、当然だ。





「んまぁ……ね」




 実を言うと、澪はまだ微熱があるままだった。





 それでも親に口実をつけて、無理矢理来たのだ。






 一人でいると、嫌な考えが次々と沸き上がってくる。







 それもこれも、稚尋がいきなりお見舞いなんかに来るからだ。




 席についた澪に、暎梨奈は満面の笑顔で言った。





「で? 稚尋とはどーなった?」



 一瞬、何を言われているのか理解できなかった。



「え?」




 どうして暎梨奈があの日のことを知っているのだろうか。



 訳がわからない澪に、暎梨奈はため息をつきながら言った。







「え? って……澪、稚尋のこと、家に入れたんでしょ?」




 暎梨奈の言葉に、澪の思考がおいつかない。





 待って欲しい。ちゃんと、理解したい。



 澪は首を傾げた。



「なっ……なんでえりがそれ、知ってんの?」





 訳がわからない。




 混乱する澪の目の前に、暎梨奈は自分の携帯画面をかざした。





 カチャリ、と流行りのキーホルダーが揺れる。




「これ、知らないの?学校裏サイト……多分この学校のほとんどの人が知ってると思うけど?」





「何それ! 知らないよ!?」




 学校裏サイト。


 暎梨奈が澪に見せた携帯画面には、あり得ないことがめちゃくちゃに書かれていた。