「…………」






「…………」










 保健室の長椅子に座り込む二人。



 全てを澪に話した稚尋。


 全てを稚尋から聞かされた澪。




 それ以上、二人の会話は続かなかった。










 そして、沈黙する二人。


















「…………」














 何か言わなきゃいけないのはわかってる。















 稚尋がこんなに苦しんでたなんて知らなかった。





 言葉が出てこない。













 稚尋、私…………。




「…………ありがとう……稚尋」





 今まで、どんなに辛かったのだろう。












 なのに、“話して”なんて無神経だった。


 私、結局何にも稚尋のことわかってないんだ。



















 こんな私に……稚尋を好きになる資格なんてあるの?



 澪はそれすら、不安になっていた。









「何言ってんだよ……姫こそ、こんな俺と一緒にいるなんて、嫌になったんじゃないの?」











「……え?」




 澪は俯いた顔を持ち上げると、そこにあったのは優しくもどこか切ない稚尋の笑顔。




 栗色の長い前髪から覗くのは、澪を惑わす瞳。


 眉を下げ、口元を吊り上げ笑顔を作る。













 それは、稚尋の癖なのかも知れない。






「…………」



 澪はただ、その笑顔に見とれていた。