荒い息を繰り返す澪を見て、雛子は心配そうに澪を見た。



「大丈夫……?」



 やっぱり、近くで見ても可愛いなぁ。


 うらやましい、本当に。


「うん、大丈夫だよ! ……それよりごめん。いきなり……びっくりしたでしょ?」



「平気だよ! 結構楽しかったし」


 雛子は笑っていた。



 澪は稚尋の姿を目で探した。



 しかし、先ほどの所に稚尋はいない。



 もっと探してみると、稚尋は人だかりから少し離れた所で冬歌と何か話をしているようだった。



「何見てたの?」


 不思議に思ったのか、雛子が澪に質問してきた。



 その顔は、満面の笑みに包まれていた。





「ううん! なんでもないよ」


 言えない。

 男の子にみとれてたの、なんて。


 澪は恥ずかしくなって、頬を赤く染めた。



 そんな澪を見て、雛子はフッと微笑んだ。



「好きな子見てたんだ?」


 雛子に言われ、澪は耳まで赤くなった。



 それを見て、また雛子が笑った。



「ははっ……澪ちゃんって、わかりやすいね」



 お腹を抱えて笑う雛子を見て、澪はわざとらしく頬を膨らませた。




「そんなにー?」



 私って、そんなにわかりやすいのかな。



 あっさり図星。



「大丈夫! 変な意味じゃないよ! 澪ちゃんが可愛いなって、思って」


 いえいえ……。


 あなたの方が何倍も可愛いと思います……。




「すごいね、雛。超能力者みたい」


「澪ちゃんが素直なだけだよ」


 雛子はそう言った。


 私が素直、か。



 稚尋の前に来ると、素直になんてなれないのにね。



 友達の前では、素直になれる。




「私、素直じゃないよ?」


 わかってるもの。



 そんなこと……。



「澪ちゃんて、やっぱり雛の好きなタイプだよ」



 雛子はそう言って、ニッコリと笑った。