先生がホイッスルを口にくわえる。




「いちについて……」


「よーい、」




 ピーッ!!!




 ホイッスルが鳴った。



 それと同時に、生徒が一斉に走り出す。


 澪の出る一回戦目は女子六人。





 三十メートル先にある箱の中から、紙を取り出す。




 そこに書いてあるものを借りて、一緒にゴールするのだ。



 澪はビリだ。





 とにかく、早く紙を!



 澪は最後に残った紙切れを掴み、走りながら広げる。


 そこにあった言葉は。



[ 美しい人 ]





 美しい人!?



 そんなっ…………。




 稚尋を呼んだら絶対、後でからかわれそうだから……無理。


 暎梨奈は……美しいって言うより、可愛い部類だから。


 澪はひらめいた。


「冬ちゃんだ!」



 冬歌が適任だ。



 冬歌には、美しいという言葉がピッタリだ。




 その直後、澪は必死で冬歌を探した。


 …………え……。



 いない!!!



 どうしようか。


 これじゃ……ぶっちぎりでビリだ。



 稚尋が言ってたことを間に受けてる訳じゃないけど、ビリはなんとなく恥ずかしい。


 誰かいないだろうか。


 そんな時だった。




 澪の視界に入った人物。


 その人物は、その中で一番輝いていた。



「雛!!」



 雛子だった。



「え!? ……澪ちゃん?」


 澪の学校の体育祭に雛子がいる理由はよくわからなかったが、今はそんな事はどうでもよかった。




 澪は雛子の手を掴み、ゴールに向かって走った。



「一緒に来て!」



「え? ……あ、うん!」



 雛子は澪の突然の申し出に、何も言わずにOKしてくれた。



 そしてそのままゴール。



 結果は二位。


 澪にしては、奇跡のような結果だ。