父はそれでもまだ追ってくる。 階段を駆け上がるあたしの背中に言葉を投げ付けた。 「待ちなさい、幸! 分かっていないのはお前の方だ!」 父は声を荒げ、階段の下からあたしを睨んでいる。 「ただ好き放題に生きて、立派な大人になれると思うか。楽な道ばかりを選んでいては、可能性を狭めるだけだ」 階段が軋む。 母は傍らで心配そうに様子を窺っている。 あたしは黙ってそんな二人を見下ろす。