初めてのキスは生暖かくて、ふにゃふにゃしてた。 ほんの数秒だったんだろうけど、とても長い時間に感じた。 「好きだよ」 少し照れたみたいな笑顔で信也先輩が言う。 胸の奥からわっと沸き上がる好きの気持ち。 「あたしも、大好き」 語尾が小さくなってしまったけど、信也先輩はあたしの髪をくしゃっと撫でてくれた。 帰り道はふわふわとして、足元が覚束ない。 だけどしっかりと握った手の平から、わずかに深まった愛を実感できた。 あたしは夢のような気分で、現実を忘れかけていた。