「何がそんなに幸をイライラさせたの」 優しく撫でるような拓海の声で名前を呼ばれ、わずかにピクリと心臓が跳ねた。 「何がって……」 「お前は一応善悪は判るみたいだから、ただなんとなくむしゃくしゃしたなんて理由じゃないだろ」 答えに迷うあたしに対して祐司が続ける。 あたしがイライラしていた理由。それを話すのは少し格好悪い気がした。 だけど真剣に聞こうとしてくれている二人を前に、はぐらかすなんてあたしには出来そうもない。