「ふーん、ユキね。どんな字書くんだ?」 本屋の男はバクバクとハンバーガーを片付けながら聞く。 どんな字って、別に普通なんだけど。 「幸せって字だよ」 「あー、幸せね」 本屋の男はハンバーガーに夢中で、聞いてないんじゃないのってくらい適当に相槌をうつ。 「良い名前だ」 小さなため息をついたあたしに、もう一人の男が言う。 驚いた。 ありきたりな名前だから、そんな風に言われたことがなかったから。 「ありがと……」 こんな時言うべき言葉が分からなくて、あたしはそんなことしか言えなかった。