ずっと澄ました顔のままの森谷。
そのムカつく表情を崩したくて、あたしは嘲笑しながらそんなことを言ってのける。
だけど。
悔しいくらいに、コイツは一枚上手だった。
「……それがどうした」
森谷は一度耳にはめ込んだイヤホンを取り外し、あたしを見据えてさらりと言う。
その表情は……やっぱり変化なし。
いつもの余裕綽々な表情。
「……そっ……それがどうしたって……」
自分が仕掛けた罠にはまってしまったあたし。
“それがどうした”と、逆に訊かれて、あたしの心臓はバクバクと落ち着きのない動きを始める。
なに、なんなのよ。
“それがどうした”って、コイツ、あたしのことを……?


