「あのね。先輩、彼女とはずいぶんと前に別れたんだって。つまり、先輩の彼女はあたし一人ってこと」
「……おまえって、ほんっとめでたいヤツだな」
フンと鼻で笑いながら、森谷はあたしの手からイヤホンを奪い返す。
「なにが“ずいぶんと前に別れた”だよ。まだ彼女とは続いてんのに」
ブツブツと言いながら、森谷はイヤホンを両手で持ち耳にねじ込む。
今の話、聞き捨てならないんだけど?
まだ続いてるなんて、どういう根拠があって言えるわけよ。
先輩本人が“別れた”って言ってんのに。
それともなに? 先輩が嘘をついているとでも?
……そんなわけないじゃん。
あたしは先輩をずっと見てきたんだから。
先輩が二股かけるようないい加減な男じゃないってことくらい分かってる。
「……あんたさ、あたしのこと好きなんでしょ。だから、先輩とのことにいちいち口出しするんでしょ」


