お父さんが立ち去ったあと。
鏡を見ると、あたしの顔は真っ赤になっている。
さっき顔を洗ったばかりなのに。
あたしは火照りを鎮めるために、もう一度、顔を洗った。
……あんな人がお父さんだなんて。
あまりにもひどい。うん、ひどいよ。
お母さんが、あたしとさくらの元父親と離婚したのは、あたしが七歳、さくらが四歳のときだった。
以降、女手ひとつで頑張っていたお母さんは、周囲が進める再婚話になんか聞く耳持たず。
元父親は他の女のところに行ってしまったと、おばあちゃんに聞いていたあたし。
“お母さんも幸せになるべきじゃないの?”
……確か、中学二年の秋だったかな。あたしは、お母さんにそう言ったんだ。
そうしたら、お母さんは涙ぐみながら、ある男の人のことをあたしに話してくれた。


