「寡黙で、厳しくて……。でも、優しいところもあってさ」
寡黙で、厳しい??
あのお父さんが?
普段のお父さんからは想像もできない。
先輩の言うお父さんの姿を必死に想像するけれど、家での姿があまりにも強烈すぎて、なかなかイメージできない。
「うーん……、家でも優しいですけど、寡黙で厳しいってところはちょっと……」
言葉を濁すようにして言うあたし。
あんまり家でのことを話すと、お父さんの“料理長としての威厳”をぶち壊してしまいそう。
「……奈緒ちゃん」
「えっ?」
突然、名前を呼ばれてドキッとする。


