その日の帰り、先輩は家まで送ると言ってくれて、あたしは素直に受けることにした。
交際成立して、まだ数時間。
今のあたしと先輩の共通点っていえば森谷とお父さんだけ。
弾むような話題はゼロに等しい。
「斉藤料理長って、家でもあんな感じ?」
「……へっ?」
突然出てきたお父さんの話題に、思わず足が止まる。
「あんな……感じって……」
家でのお父さんの姿を頭に思い浮かべてみる。
いつも笑っていて、あたしとさくらにはデレデレした顔しちゃって。
時折、あの端整な顔が間近に迫ると、あたしは娘であることを忘れてドキドキしてしまう。


