†Orion†〜Nao's Story〜



緊張がピークに達してきて、あたしは先輩の顔から視線をわずかにそらす。


失恋が確定する瞬間。

先輩の顔をじっと見ることなんか、できるはずもない。



「いないよ」



うつむいていると、頭上から、そんな優しい声が降り注ぐ。

咄嗟に顔を上げると、先輩がにこにこと笑いながらあたしをじっと見ていた。



「あのっ、あたしと付き合ってください!」



その笑顔にやられてしまって。

さっきまでの緊張はどこへいったのか。

ずっと言えなかった言葉が、自然と口をついて出てきた。


ビックリしているのは、突然の告白を受けた先輩だけじゃない。あたしもだ。

彼女がいないと分かった瞬間に、さらりとこんなことが言えるなんて。