「俺さ、料理長とは違う店でバイトしてたんだよね。ヘルプで何回か料理長の店に行ったことあるんだけど……覚えているかなぁ、料理長」
あたしに問いかけるようにして、先輩は顔を覗き込む。
お父さんから、先輩の話なんて聞いたこともなくて。
だからといって、はぐらかすこともできなくて。
「覚えていますよ、もちろん」
いけしゃあしゃあと嘘をつくあたしに、先輩はにこりと笑った。
「……で、話って……?」
お父さんの話題が終わったところで、先輩が思い出したように訊いてくる。
そうだった。
本題はお父さんのことじゃなくて、先輩への告白だったんだ。
……しかも、すでに終わりが見えている告白。


