穏やかに笑いながら、あたしの髪の毛をくしゃりと撫でる余裕さえも持っている。



「お父さーん! ちょっと来てー!!」



ダイニングでお父さんを呼ぶのは、二つ年下のあたしの妹・さくら。



「どうしたー?」



呼ばれてすぐには行かず、お父さんは少し乱れたあたしの髪を軽く整え始める。


お父さんが手を動かすたびに、捲くり上げたワイシャツの袖口から覗く大きな火傷のあと。

洗面所の鏡越しにそれを見ていたあたしは、あの日のことを思い出す。



「いいからちょっと来てー!」


「すぐ行くー。……よし、完璧だ」



鏡越しに、にこりと笑いかけるお父さん。


……反則だ、こんな父親。