「斉藤料理長の娘さんでしょ?」
「……あっ、はい」
「じゃ先輩、俺はこれで」
非情にも、森谷は“役目を終えました”と言った感じで、先輩に軽く頭を下げて去っていく。
……つか、ちょっと待ってよ。
あんた、最後までいてくれるんじゃないの!?
散々、森谷のことをうっとうしいと思っていたくせに。
立ち去っていく森谷の背中を見て、あたしは泣きそうになってしまう。
「……料理長、元気?」
「えっ、あぁ、はい。元気……です」
先輩を間近で見るのは初めてで。
ドキドキしすぎて、あたしの視界は定まらない。
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