「……お父さん?」
「あ、うん、そう……。……って、森谷っ!?」
森谷がスタスタとお父さんのほうに向かって歩き出す。
ちょっとちょっと。
森谷、なにを言うつもり!?
森谷がお父さんの前までくると、お父さんは落ち着いた笑みを浮かべる。
森谷もまた、お父さんと同じように笑顔だけれど。
二人のこの笑顔は、どうも恐怖さえ感じる。
「はじめまして。奈緒の“父”です」
お父さんが“父”と強調すれば。
「はじめまして。“彼氏”の森谷です」
まだ正式に付き合いが成立していないくせに、森谷は勝手なことを言う。
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