いやあぁぁぁ、その話は帰ってからにしてよ。
ドアを隔てたむこうには、ヤツが……森谷がいるんだよ。
森谷がいつ、このドアを蹴破ってくるか……。
「赤ちゃんが生まれても、俺は今までどおり奈緒とさくらのことも大切にするからな」
「うっ、うん……っっ」
「奈緒とさくらは……」
「お、おおおお父さんっ、ごめん、あたし、すっごい急いでるんだ」
「あ、そうか。ごめん」
ごめん、お父さん。今は本当にそれどころじゃないんだ。
赤ちゃんが生まれることは大歓迎だよ。
あたしもさくらも、もう子供じゃないんだから、“赤ちゃんばっかり構ってる!”なんて駄々をこねたりしないよ。
だけど……ありがとう。
そこまで考えてくれていることが、嬉しいよ。


