ヘタレとか、そういう問題じゃないでしょ、この場合。 そりゃあ、先輩のときは勢いで“好き”って言えたけどさ。 “好き”の言葉を待っている相手に対して、改まって言うのは緊張の度合いがあまりにも違いすぎる。比べ物にならない。 「……き」 それでも。 小さな小さな声で。そして、うつむきながら。 少し離れたところにいる森谷に向かって、ボソリと呟いてみる。 「斉藤さーん、きこえませーん」 そんなあたしに、森谷は小学生のような口調で言い返した。 「す……」 あぁ、いやだな。こんな告白のしかたって。