「……“お父さん”」 そう呼ばれた男の瞳に、じわじわと涙が浮かぶ。 あたしは呆れ顔で、溜息をひとつついた。 「“お父さん”……。奈緒、やっぱり、もう一回……」 「いいかげんにしてよっ。あんまりしつこいと、“雅人っち”って呼ぶよ!?」 「や、それだけは勘弁……」 困ったように笑う“お父さん”に、あたしは不覚にもドキッとしてしまう。 ――斉藤 雅人。 彼は、あたしの新しい父親だ。 お母さんの再婚をきっかけに、あたしは“杉浦奈緒”から、“斉藤奈緒”になった。