顔を合わせられない、とか、そんなこと言っている場合じゃない。
あたしは重い口調で、お父さんのケータイの番号を伝えた。
「あ、もしもし。わたくし、××スーパーの店長をしている庭田と申します。斉藤奈緒さんのお父様でいらっしゃいますか?」
丁寧な口調で、やってもいないあたしの“万引き”をお父さんに伝える店長。
……お父さん。
仕事が大変なのに、こんなバカげたことで呼び出し受けるなんて……。
「はい、分かりました。お待ちしております」
その言葉で、お父さんが大切な仕事を中断してここに来ることを悟る。
お父さん……。
あたしのこと、信じてくれるよね。
ごめん、お父さん。
こんなことで呼び出したりして……。


