お父さんの名前が出てきて、あたしはビクリと体を震わせる。
料理長という立場上、お父さんは常にケータイをコックコートのポケットに入れていると、以前に聞いたことがある。
「…………」
こんな状況でお父さんと顔を合わせるなんて、できるはずがない。
すっかり閉口してしまったあたし。
それまで黙っていたオバチャンが、深い溜息をついたあとに言った。
「じゃあ仕方ない。学校と警察に電話するしかないわね」
「……っ……!」
学校と警察……。
あたしは無実だけれど、この二つに連絡が行ってしまったら、もっともっとお父さんとお母さんに迷惑をかけてしまう。


