実際は――
あたしはあのまま、バスケ部の部室で延々と泣き続け。
森谷は飽きもせずにあたしを抱きしめたままだった。
「……おまえさぁ、ハンカチくらい持って来いよ」
職員室でたっぷりと絞られたあと、教室に向かいながら森谷が呆れたように言った。
森谷のシャツは、あたしの大量の涙でぐっしょりと濡れている。
「……今日はたまたま忘れただけだよ」
あたしは、変わりなく接してくる森谷の顔をまともに見ることができなかった。
教室に戻ると、クラスメートは全員帰った後で。
あたしは帰り支度を、森谷は部活に行く準備を始める。
「あ――……、森谷。iPod忘れてる」


