森谷は、あの日の放課後と同じように、あたしの視界に映っていた部室の出入り口を自らの体で消し去る。
……なによ。
あたしを慰めているつもりなの?
森谷は何も言わず、黙ったままあたしの体を抱きしめる。
包み込む両腕があまりにも優しくて、あたしの涙腺はとうとう崩壊してしまった。
「……頑張ったな」
森谷が、あたしの耳元でそう囁く。
……森谷はとても嫌なヤツで、あたしの天敵だ。
こうやって、あたしの恋を無理やり終わらせるくらいに冷酷なところもある。
きっと、以前のあたしなら心の底から本気でムカついていたと思う。
“頑張ったな”と言う言葉に、意味もなく胸がギュッと締め付けられて。
あたしは、森谷にしがみつくようにして泣き続けた。


