†Orion†〜Nao's Story〜



ふと気がつくと、そこにいるはずのお父さんの姿がない。



「ねぇ、お母さん……」



あたしは未だに、さくらみたいに“お父さん”と、すんなりと呼ぶことができない。

お父さんを嫌いなわけじゃない。

ただ、あのカッコよさは、父親として反則だと思うから。


時々、ぽろりと“お父さん”と呼んでしまうこともあるんだけど。

そういうときは決まって、“もう一度言って”と、お父さんから執拗なまでに頼まれる。



「あぁ、雅人? 玄関にいるわよ」



お母さんに目で訴えると、お母さんはあたしの気持ちを汲み取って、ふふっと笑いながら、お父さんの居場所を教えてくれた。