お父さんの右腕には、その時の火傷の痕が大きく残っている。
さくらは、それをとても気にしていたけれど。
お父さんは“父親の勲章だ”なんて、豪快に笑い飛ばした。
「奈緒ー? 早くしないと学校に遅れるよー?」
「はーい」
お母さんに言われて、あたしは鏡でもう一度、自分の顔をチェックする。
うん、完璧。顔色も元に戻った。
洗面所からダイニングルームに向かう。
テーブルには、お父さんが作ってくれたお弁当が置いてある。
……まったく。毎日よく続くよ。
父親になってから、お父さんは毎日、家族の朝食とあたしのお弁当作りを欠かさない。
ファミレスの料理長として、多忙な毎日を送っているのに。
「……あれ?」


