「……奈緒……?」
飛び跳ねるように体を起こし、森谷を突き飛ばしたときにはもう遅かった。
「何やってんだよ」
約束どおり教室にあたしを迎えに来た先輩が、顔を歪ませて立っていた。
……すべてを、見られてしまった。
「先輩、違うの……っ、これは……」
なにが、違うんだろう。
森谷から逃げようと思えば、逃げることだってできたのに。
先輩がもうじきここに来ることくらい分かっていたくせに。
“違う”と都合のいい言い訳が、そう簡単に出てくるわけがない。
不覚にも、森谷に対してほんの一瞬でもドキドキしたのは事実だったし。
頭のなかで先輩を好きだと言い聞かせながらも、カラダがその思考についていかなかったのも事実だったから――……


