“……御家族の方ですか?” あの日の奇跡を、あたしたちは今でも覚えている。 顔を曇らせて、あたしたちの前に現れた看護士。 いまにも泣き出しそうな顔をしていて、あたしたちは彼の最期を悟った。 でも…… “心肺戻りました! 意識も……っ” 最期を告げに来た看護士を呼び戻しに来た、別の看護士。 一度止まった彼の心臓は再び動き出し、その時の後遺症もなく、彼は無事にあたしたちの父親になったんだ。 このときほど、あたしは神様の存在を信じたことがなかった。