「……彼氏待ちか?」
ピアスにうっとりしていると、あの憎たらしい声が聞こえてきた。
ふと顔を上げると、教室の入り口にジャージ姿の森谷が立っている。
「……森谷……」
確かあのジャージ……、バスケ部のだ。
へぇ、こいつ、バスケ部に入っていたんだ。
背が高いなーとは思っていたけどさ、バスケ部員だったなんて知りもしなかったわよ。
そう。それくらいあたしは、この男に興味のかけらすらなかったのだ。
「あんたは何よ。何しにきたのよ」
首から提げたタオルで汗を拭いながら教室に入ってくる森谷に、あたしは横着な態度で訊き返す。
「忘れ物」
言って、森谷は机の中から愛用のiPodを取り出す。


