あたしの“初めて”をふたつ持って行っちゃった先輩。
それをきっかけに、先輩との距離がぐんと近くなったような気がした。
「じゃあね、奈緒ー。また明日ー」
「うん、バイバーイ」
放課後。
亜里沙が先に帰ったあと、あたしは教室の自分の席で先輩が来るのを待つ。
三年生は課外授業があるから、あたしたち二年生よりも帰る時間が遅い。
クラスメートたちがいなくなった教室。
窓からは西日が差し込んできて、教室をオレンジ色に染める。
あたしはバッグの中からコンパクトミラーを取り出すと、髪をそっとかきあげ、先輩が開けてくれたピアスを鏡越しに見ながら指で弄ぶ。
――ピアスを開けて、もうすぐ一ヶ月になる。
もうそろそろ、さくらがくれたピアスに取り替えてもいい頃だ。
けれど、先輩の手によって耳につけられたこのピアス。外すのが何だか惜しい気もする。


