†Orion†〜Nao's Story〜



「いいなぁ、彼氏に開けてもらったんだ……」


「うん……」



羨むさくらを前に、あたしが思い出すのはピアスを開けてもらったことじゃない。

そう。生まれて初めて感じたあの激しい痛み……。



「……お姉ちゃん? 顔、真っ赤だよ?」


「……えっ? う、うん、なんか暑くない?」


「……いや、別に暑くないけど……」



あのあと……。

あたしは恥ずかしさのあまり、先輩の顔をちゃんと見れなくて。

そんなあたしを、先輩はずっと抱きしめてくれていた。


先輩の腕のなかで、あたしは何度も思ったんだ。


“彼女がいるのに、他の子に手を出した”


こんなに温かくて、慈しむかのようにあたしを包み込んでくれた人が。

そんな非情なことをするはずがないって。