でも……
やっとお母さんに会えるっていうのに。
神様はすごくイジワルなことをやってくれた。
ようやくたどり着いた、あたしたち親子が住むアパート。
あたしと彼が見たものは、業火に包まれているアパートだった。
お母さんはたまたま買い物に出ていて、事なきを得たんだけど。
……さくらが、燃えさかる炎のなかに置き去りにされていたんだ。
“雅人っ!?”
彼は、迷うことなく、さくらを助けるために火の中に飛び込んで行った。
彼によって救い出されたさくらは、軽い火傷を負っただけで済んだけれど。
彼のほうは、煙を吸い込んでいて、意識不明の重体。
すぐに病院に運ばれて、あたしたちは彼の意識が戻るのを懸命に祈り続けた。


