†Orion†〜Nao's Story〜



「な……なに……」



すっかり動揺しちゃってるあたしとは大違いで。

先輩は落ち着いた様子で、片方の手をあたしのからだから離し、頬へと伸ばす。

ほんの少しだけ頬を上げながら、ゆっくりと顔を引き寄せる。


あ……、睫毛、ながい……。


間近で先輩の顔を見ながら、あたしはそんなことを思う。


この状況は、間違いなくキス。

はじめてのキスに、あたしはごくりと息を呑み、覚悟したかのように目を閉じた。


キュッと固く結んだままのあたしの唇に、柔らかく温かい感触。

それはすぐに離れてしまい、あっけなく終わったものだと思った瞬間、先輩の低い声があたしの耳元で囁く。



「力、抜いて」



コクコクと頷きながら、あたしは体の力を抜く。

そんなあたしに、先輩は、また言う。