「な……なに……」
すっかり動揺しちゃってるあたしとは大違いで。
先輩は落ち着いた様子で、片方の手をあたしのからだから離し、頬へと伸ばす。
ほんの少しだけ頬を上げながら、ゆっくりと顔を引き寄せる。
あ……、睫毛、ながい……。
間近で先輩の顔を見ながら、あたしはそんなことを思う。
この状況は、間違いなくキス。
はじめてのキスに、あたしはごくりと息を呑み、覚悟したかのように目を閉じた。
キュッと固く結んだままのあたしの唇に、柔らかく温かい感触。
それはすぐに離れてしまい、あっけなく終わったものだと思った瞬間、先輩の低い声があたしの耳元で囁く。
「力、抜いて」
コクコクと頷きながら、あたしは体の力を抜く。
そんなあたしに、先輩は、また言う。


